戻ると、私の大事に大事に置いていたものがなくなっていた


















全然、気にしていなかった私自身も悪いと思う。
ただ、普通はしない、普通は。

というより、あの私の悲鳴とも取れる絶叫は一体どれだけの人を起こしてしまっただろうか。
あれは、すごい朝早かったしな…。
そうだ、あれはでもスクアーロの所為。
スクアーロさえ何もしていなければ私はこんなに怒られることもなかったし
今ごろは幸せの真っ只中だったんだろうと思う。
スクアーロなんて大嫌い。




「そんな怒ることねぇだろぉ?」

「煩い…
てか、そんなこと言うんだったら…はぁ……」

「溜息ついたら幸せも逃げるんだぜぇ」

「うん、誰がつかせてると思ってんだ、コラ
それよりね、同じの買って来いって言いたいところだけどあれ期間限定でもう売ってないのよね」

「………」

「しかも、一粒何円だと思ってるの?
1000円だよ?ある意味たかがチョコレートごときに1000円だよ!?
それに、一粒だけならまだ許してたかも知れないけど、5粒全部食べられてるんだなんて…」

「そんな大事なもんなら冷蔵庫に入れておくっていうことから間違ってるだろぉ!?」

「逆ギレ!? キィー!!!もういい! あー、もうマジでむかつく」


そう言いながらドアに向かって歩き、腹いせにドアを蹴飛ばしてみた。
すると、ドアは綺麗に潰れてしまって、ドアさん、ごめんなさい☆


部屋に戻ってすぐに、ベルが「ボスが呼んでる」ということを伝えに来てくれた。
部屋に戻った意味が無いので、むかつきゲージも順調にアップしてしまう。



「はい、なんでしょう」

「任務だ」












「任務っつーことぐらい分かってんだよ…」



ついつい、ボソっと言ってしまった。
しかし、うちのザンザスさん。とてつもなく地獄耳。
「なんか言ったか」と言いながらこっちを睨んでくるので正直怖い。




「いや、そんな対したことじゃないです」

「……。後で地下に来い」



出た。地獄の地下。
前にスクアーロも呼ばれてた気がするけどその後のスクアーロはまるで別人みたいに疲れた顔で口さえ聞いていなかった。
あぁ、何処かに私の影武者になれる人はいないのか。




++++++++++++





なんでスクアーロがあれだけ疲れた顔をしていたのか今なら分かる。
肉体的にじゃなくて精神的にキツい、あれは。
本当に死にたいとあそこまで思ったのは初めて。
しかも、その後明日の早朝から任務に行けだなんて、あんたは人を殺す気か。


それでも、もう二度と地下は経験したくないので黙って任務を遂行しておく。
しかし、任務中にもチョコレートのことと地下のことで頭がいっぱいになってしまう。
何度、任務にだけ集中しようと思ってもなかなか出来ない。
本当にスクアーロさえ居なければなぁ…。




+++++++++++





無事、任務も終わり報告に行く。
その時はもうハメをはずさないようにとものすごい神経を使った。

急ぎ足で部屋に戻ると、何故か部屋の明かりが付いている。
何故、と思って勢いよくドアを開けるとベッドの上に何故かスクアーロが寝ていた。
よく電気つけたまま寝れるな、と思うがすぐに本当の問題はそこではないことに気がつく。



何故、スクアーロが私のベッドで寝ているのか、それが一番の問題。



とりあえず、スクアーロには悪いが起きてもらうことにする。
それも「スクアーロ、起きて」と言うわけではなく、頭を一蹴りして起こす。
すると、「うっ」と短い声が聞こえたような気がするけど無視するに限る。


「なにも、蹴る事ねぇだろぉ!?」

「じゃあ、ここで寝んな、カスが!」

「なんか、お前ザンザスに似てきてねぇかぁ……?」

「えっ…やべ、それなんか困る」


というか、どのへんがボスっぽいんだ?
え、カスっていうか単語か?
それとも、ここで〜カスが!までの部分なのか?
疑問符もいっぱいついてしまう。
まあ、そういうことは流れ的にスルーしておくのが一番だ。



「で、本題なんだけどなんでアンタがここで寝てるのか?」

「お前が帰ってくるのが遅いからだろぉ?」

「は、なんで私に罪が?

というか、今回はちょっくら遠いとこって行っても日本内だけどそんな感じで行ってたから遅っかったんだよ」

「そうかぁ…

こっちだって色々大変だったんだぜぇ?」

「大変ってなにが?」



私がそう言うと、スクアーロはベッドの下に手を突っ込んでなにかを捜索している。
つーか、勝手に人のベッドの下を荒らすなよ。


そして、しばらく荒らしてから出てきたのはあの食べられたチョコレート+α。
そのαとは私が前々から食いたい食いたいと言っていた同じ店のアップルパイ。
推定、5000円。
税込みで、10500円分スクアーロは支払ったと言うわけ。



「スクアーロ大好きっ!!!」



そう言って思わず抱きつく、というより跳びついた。
スクアーロはよろける事も無く、しっかり立っていた。
私の別名ボディアタックを喰らって立ってられるなんてなかなかのやり手だな。



「じゃあ、アップルパイはまず私とスクアーロと……ボスとは食べたくないからなあ。
マーモンと…ベル……を誘おうと思ったけど任務中だった、そういえば。
じゃあ、取りあえずスクアーロ。紅茶をレモン4滴で持ってきて」

「……じゃあ、切っとけよぉ?」

「分かってるって。
これで、お互い様でしょ?」

「そうだなぁ」



意外とスクアーロの入れる紅茶って美味しいんだよね。
一番紅茶がまずいのはベルだな、今のところ。
毒でも入ってるんじゃねぇかと思うような味をしてる。
ていうか、実際に毒を入れている気もする。




「出来たぞぉ」

「あ、ありがとう

さて、食べましょうか!」

「そうだなぁ」




言われて気付いた事だが、紅茶が出ていたら私は必ず最初に紅茶を飲むらしい。
そして、いつもと同じようにスクアーロが入れてくれた紅茶に手を伸ばす。
一口啜ると口の中にじんわりと丁度いい具合の甘さが広がるがそれと同時に今回は、ひりひりとした感覚までした。





「ちょっと、お湯熱いの使ってない?」

「そうかぁ?そんなことないぜぇ」

「今日はいつもより熱いって、絶対に」

「ちょっとかしてみろぉ」





かしてみろとか言ってる割には無理やり奪ってくる。
やっぱり、こいつは身勝手だ。
しかも、その紅茶を飲んだからまたビックリ。
「熱くねぇだろぉ」とやつは言う。
飲んで確認したから返してくれるのかと思いきや、もう一口飲みやがった。
いくら、自分の入れた紅茶が美味しいからってなにも人のを二回も飲むことないだろ、と思っていると紅茶が口に入っていると思われるスクアーロがこっちに向かって歩いてきてる。
まさか、顔にかけられることはないだろうと思いながらも後ずさり。
え、ちょっとまじで顔に紅茶を思いっきりかけられたらどうしよう、なんて考えてしまう。
でも、想像していたものではないことが次の瞬間に分かった。
肩を思いっきり掴まれる。
そして、顔が近づいてきたかと思うと唇が重なり合った。
こういうのは前々にも少なからずあったので、そんなに驚くことは驚くがさほど驚かないで済んでいた。
いつもと違うのは、口の中に少し生温い紅茶の味が広がる事だ。
実際すごい気持ち悪い。
必死になって、スクアーロの胸板を叩くが効果なしどころか逆に後頭部を押さえられる始末。
結局おとなしくその生温い紅茶を飲まなければいけないようになってしまう。

私が最後まで飲んだのを見てようやく唇を離した。
たぶん、今私の顔は真っ赤だろうが、「スクアーロなんて大嫌い!」と言って部屋を出る。
一生口をきいてやらない、と思ったがそれが一体何回思ったことだろうか。


最高記録はたったの一週間。
今回の記録はこれよりも上になるか下になるかどっちだろう、なんて考えてみた。






嫌い、好き、嫌い、さぁどれでしょう?





。あとがき。
遅くなってしまって申し訳ありません!
改めまして、素敵な企画に参加させていただきありがとうございます!!!
拙い文ですが、もうこれ以上どうしようもないのでその辺りはご了承ください。