雲雀とけんかした。理由なんて知らない、忘れちゃったけどさ。私もいいすぎたとは思うけど
それにあんな態度はないと思います。もう今回は本気で本気で本気で怒ってるんだから。向こ
うが謝りにくるまで絶対に許さない!だけど、今日の学校はなんとなく恐いからお休みしたい
です。お母さんにおなかが痛いと泣きつけば、意外にあっさり休ませてくれました。学校休め
るっていいね。とりあえずもう一度布団にもぐって夢の中に入ろうと目をつむった。
01.仮病
「ねえ、」
ちょっとなにさ、私今いいとこなんだけど。もう今いい感じに眠れそうなんだから、邪魔しな
いでよ。「無視かい?」ってあれ、よく考えればこの声って誰だっけ。いやよく知ってるあの
人の声ですよ。変な夢見るもんだな。
「寝てるの?」
「うん」
「起きてるじゃない」
「は?なに言ってるの私今すごく気持ちよく安眠中だよ」
「安眠してる人はしゃべらない」
「寝言だよ」
「会話になってるんだけど」
「おかしいな」
「おかしいね」
え、あれ、本当だね。私はじめてだよ、夢で会話したの。じゃなくて、そんなわけないじゃん
ね。そこでやっと気付いてしまった私は急いで布団を頭までかぶった。
「ねえ、なにしてるわけ」
「………」
「僕を無視するなんていい根性してるじゃない」
「………………」
「あぁ、そうか、わかったよ」
「………………………」
「誘ってるんだね」
「断じてちがーう!!」
やっちまったー!思わずつっこんで布団から出ちゃった。そのときの雲雀の顔ったらないわ。
すっごい綺麗な笑顔を浮かべてるの。いや、綺麗というか私にとっては恐いんだけど。
「あの、どして、ここに」
「学校に連絡があってね。急いでバイク出したよ」
「え、あの、心配して、ですか……?」
「僕から逃げようなんていい度胸だって意味」
うわーうわーうわーひぇー!やっぱりこの人恐い怖いこわい!逃げましたよ、だって恐いじゃ
んね。だからって追いかけてくるのってなに!?
「まあ、ちょっとは心配したけど」
「え?」
「でも結局仮病だし」
「いや、仮病っていうか」
「なに?」
「ごめんなさい仮病です」
言葉で言いくるめられてしまった。あぁ、本当に私って弱いな。だって本当に恐いんだもん。
言っとくけどね、雲雀は最強ですよ?負けたことないんだから!(ひばりがいった)いや、暴
力をふるわれたことはないけど、まだ。それでも時々っていうかしょっちゅうおどされるし。
今日だって、謝りにきたとは思えないしさ。
「で、本当に仮病なの」
「えぇ元気ですよ、そしてまだ許してませんよ」
「許すもなにも、僕悪くないよね」
「はぁ!?」
「まあいいや、早く着替えなよ」
まあいいやってなに、まあいいやって。私にとっては学校休みたくなるほどのことだったのに
あんたにとってはそれよりもな話題だったわけ?なんかだんだんむかついてきた。だけど早く
と急かされれば言うとおりにしてしまう私。そんな自分がいやなんだけど、なんで動いてしま
うかといえばまだ好きだから。嫌だ嫌だと思っていても付き合ってしまうほど私はこの男にベ
タぼれということだ。パジャマを脱いで制服に着替えると雲雀は私を抱えて軽やかに窓から飛
び立った。っておい!飛び立ったってなに!?言っときますけどここ二階なんですけど!雲雀
さんあなた名前が鳥っぽいからって飛べると思ってるんですか!?無理ですよ!人は空を飛べ
ないんですって!!心の中で大パニックを起こしている間に雲雀は軽やかに地面に着地して私
を降ろした。呆然としていたら何かを投げられて、よくみればそれはヘルメットだった。
「な、なにこれ」
「メット」
「みりゃわかる」
雲雀はといえば、バイクのエンジンかけてまたがっていた。目で後ろを示されて大人しくまた
がって背中にしがみついた。バイクを走り出したものの、それは学校とは逆の道。
「どこ行くの?」
「どこ行きたい?」
「学校じゃないの?」
「せっかく休んだんだから、楽しもうか」
「いいの?」
「だって、行きたかったんだろう?」
そう、けんかの原因は最近ずいぶん長い間遊びに行ってなかったこと。雲雀が仕事が忙しくて
いつも応接室にひきこもってしまうから、私がどこか行こうといったら無理と短く言われてし
まい、その言葉にむかついた私が切れたというくだらないこと。わがままを言ったことはわか
っていたから、謝ろうとは思った。だけどいまいち勇気がでなくて今日は一日ゆっくり考えよ
うと思ってた。それなのに、雲雀はちゃんと考えてくれてたんだ。
「どこ行く?」
優しい声が耳に伝わる。好きだっていっぱい実感させてくれる。側にいられるのがどうしようも
なく嬉しい。雲雀が大好きだ。なんだかんだいって、優しいひばりが。
「ありがとう」
小さくつぶやいて、私は背中に強く抱きついた。
「Celebrazione.」様に提出!ありがとうございました
20060810 |